「現場の安全」は物理だけじゃない。インティマシーとセーフティが手を取り合う撮影現場の未来

先日、あるドラマ撮影現場でのキャストやスタッフ間のすれ違いに関するニュースを目にしました。

報道の真偽や個別の事情については、当事者にしか分からない部分も多くあります。しかし、日々撮影現場の安全に携わる立場として、改めて「現場で人を守るとはどういうことなのか」を考えさせられる出来事でした。

現在、映像制作の現場では、「出演者やスタッフをどのように守るか」「どうすれば誰もが安心して仕事や表現に集中できる環境をつくれるか」ということが、これまで以上に重要になっています。

今回は、私たちが日々取り組んでいる撮影現場のHealth and Safety®と、近年日本の映像制作現場でも認知が広がっているインティマシー・コーディネーター(IC)との連携について、実際の現場で感じていることをお話しします。

 

実際にインティマシー・コーディネーターとご一緒して感じたこと

映画やドラマの撮影現場で、インティマシー・コーディネーター(以下、IC)の方とご一緒する機会が増えてきました。

ICは、親密な表現や身体的接触など、出演者にとってデリケートな撮影において、出演者本人の同意や身体的・心理的な境界線を確認しながら、演出意図を安全に実現するための調整を行う専門職です。

実際にICの方が参加する現場では、Health and Safety®を担当する私たちにとっても、非常に仕事が進めやすくなると感じています。

ただし、Health and Safety®ICは同じ仕事をする専門職ではありません。

私たちHealth and Safety®は、ロケーション、撮影方法、機材、車両、アクション、作業環境、衛生、スタッフの動線、緊急時対応など、撮影全体に存在するさまざまなリスクを事前に把握・評価し、必要な安全対策を整えていきます。

一方、ICは、親密な表現を伴う撮影において、出演者の同意や境界線を確認しながら、出演者と演出側との間を専門的な立場から調整します。

専門領域やアプローチは異なりますが、「出演者やスタッフが安心して仕事に集中できる環境を整える」という点では、多くの共通する目的があります。

必要な場面に必要な専門職が配置され、それぞれが情報を共有しながら連携することが、より安全で円滑な撮影環境につながると感じています。

 

現場で起きがちな「認識のすれ違い」と専門家の役割

撮影現場では、限られた時間の中で多くの部署が同時に動きます。

監督、演出部、制作部、撮影部、照明部、美術部、衣装・メイク、アクション、出演者、ロケーション関係者など、多くの人がそれぞれの役割を担いながら作品をつくっています。

そのため、どれほど事前に打ち合わせを行っていても、
「必要な情報が一部の関係者まで届いていなかった」
「部署ごとに認識している条件が少し違っていた」
「これまで問題がなかったため、今回も大丈夫だろうと判断してしまった」
といった認識のズレが発生することがあります。

こうした小さなすれ違いが積み重なることで、出演者やスタッフの不安につながったり、場合によっては事故やトラブルにつながったりする可能性があります。

だからこそ、撮影前の段階で懸念点を洗い出し、安全上の条件、役割分担、対応方法などについて関係者間で共通認識をつくっておくことが重要です。

Health and Safety®ICを含めた専門職の役割は、単に「できる・できない」を判断することではありません。

よく、
「安全担当が入ると撮影に制限が増えるのではないか」
ICが入ると表現できることが少なくなるのではないか」
と考えられることがあります。

しかし、私たちはそのようには考えていません。

私たちの役割は、撮影を止めることではなく、事前にリスクや懸念点を明確にし、「どうすれば安全に実現できるか」を制作チームと一緒に考えることです。

撮影方法、環境、機材、動線、人員配置、時間、緊急時対応などを事前に整理しておくことで、現場では余計な不安や混乱を減らし、本来の撮影や演技に集中しやすい環境をつくることができます。

ICについても同様に、出演者と制作側が事前に境界線や撮影条件を共有しておくことで、現場での認識のズレを減らし、より安心して表現に集中できる環境につながります。

これからの撮影現場に求められる「Health and Safety®」のカタチ

日本の映像制作現場では、Health and Safety®ICといった専門職の存在が少しずつ認知されるようになってきました。

一方で、人材の不足や、事前準備に必要な時間・コスト、制作体制の違いなど、まだ多くの課題が残っています。

また、「安全管理は安全担当だけが行うもの」「出演者への配慮はICだけが行うもの」という考え方では、十分とは言えません。

本来、撮影現場の安全は一つの専門職だけで完結するものではありません。

Health and Safety®IC、アクション、制作、演出、ロケーション、医療・救護など、それぞれの専門分野が役割を理解し、必要な情報を共有しながら連携することで、初めて現場全体の安全性を高めることができます。

私たちHealth and Safety®の役割は、撮影現場に存在するリスクを事前に把握し、評価し、可能な限り低減することです。

事故やトラブルの可能性を事前に洗い出し、安全対策を整え、それでも発生し得る事象については、緊急時の対応まで含めて準備しておく。

こうした積み重ねが、出演者やスタッフだけでなく、制作会社、ロケーション、そして作品そのものを守ることにつながります。

そして、撮影を終えたときに、出演者もスタッフも、「今日も安心して良い仕事ができた」と思って現場を離れられること。

それが、私たちが目指す撮影現場のHealth and Safety®です。

エムアテンドジャパンは、これからも撮影前のリスクアセスメントから撮影中の安全管理、救護・医療体制、緊急時対応まで、制作チームとともに現場の安全を支えていきます。

そして、ICをはじめとするさまざまな専門職とも連携しながら、日本の映像制作現場における安全文化の向上に取り組んでまいります。

また、こうした撮影現場のHealth and Safety®をともに支えていただけるパートナーも募集しています。

撮影現場の安全衛生に関心をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。

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